2017年12月20日

「トランプが、エルサレムを首都承認した」

 
「2009」番 「トランプが、エルサレムを首都承認した」問題を徹底的に解説する。日本人は、中東アラブ、イスラエル問題を大きく理解するために、歴史を勉強するべきだ(前編)。


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副島隆彦です。今日は、2017年12月19日(火)です。

副島隆彦です。以下の文は、私が2017年12月11日に話した内容です。


  この12月6日に、トランプ大統領が、「イスラエル国の首都はエルサレムである、とアメリカ政府は認める」という声明を出した。これでアラブ、イスラム諸国が大騒ぎになった。抗議するパレスチナ人に死者も出ている。これが一体どういうことかを、知識人層でも日本人は理解できていない。

私たちは、今のイスラエル国の地 = パレスチナ であることをはっきりと知るために、歴史の勉強をするべきだ、ということで、徹底的に、私が、解説します。

私、副島隆彦は、イスラエル(ユダヤ教徒)、イスラム教諸国の両方の立場、主張を大きく説明することで、皆の理解を得ようと思う。

いまイスラエル国(人口はたったの850万人ぐらい。千葉県ぐらい)は、一番大きな都市であるテルアビブから東に100キ行ったところの西エルサレムに首都があります。

アメリカ政府は、今はテルアビブにあるアメリカ大使館を、エルサレムの西側の高層ビルも建っている地区に少しずつ移していくと決定した。これを今から4~5年かけて実行すると、言っています。

 アメリカ政府が自国の大使館をイスラエル国内のどこに置こうが、建物は、お金さえ払えば買ったり借りたりできる。今はエルサレムの旧市街ではなくて、その外側のビルがたくさん建っているきれいなところにビザを発給するアメリカ領事官があり、そのそばに大使館も持ってくるとトランプが言っただけのことのだ。それでも大騒ぎ。それは、ここに至る、長い歴史がある。それは、今から3200年前(紀元前1200年)に遡(さかのぼ)る。

 アメリカがエルサレムを首都と認めると言っただけで、中東が、また戦争になるのではないか、と日本人は、訳も分からず、不安になる。知識がものすごく不足しているからだ。何やら、むずかしい解説(文)だけは、日本のテレビ、新聞はする。

パレスチナ人を初めとするイスラム教徒たちが世界中で騒ぎ出していると言っています。それは日本の知識階級を含めて知識がないからです。
 私、副島隆彦の結論は、「 トランプがアメリカの大使館をテルアビブから西エルサレムに移したからといってたいした事にはならない。ただし日本人は、大きな理解で歴史を勉強しなければ」である。アラビア人、イスラム教徒たちが騒ぎ出して大変なことになると勝手に思い込むのは知能、知恵(=知識)が足りないからだ。私が、これから本気で説明しますから、よく理解してください。

 日本の知識階級も、新聞記者たちも政治家も、大学教授たちでさえ、以下に私が話すことを、大きく理解できていない。それはイスラエルの建国以来のことがよくわからないし、報道があまりされないからだ。この建国には、1948年(今からたったの70年前)と、もうひとつ、今から何と3200年前の、紀元前1200年(ごろ)の、ふたつの建国があるからだ(笑い)。としか、私は言いようがない。このことをまず、言っておきます。「それは何のことですか」と疑問に思っていいから、私の話に耳を傾けなさい。

ここで、この問題で 現地ルポした新聞記事を一本、ここに載せておきます。

(転載貼り付け始め)

 共存脅かす首都認定、深まる苦悩 ルポ・エルサレム

2017/12/17   日経新聞  ( エルサレムで飛田雅則 )

 エルサレムはイスラエルの首都であるとしたトランプ米大統領による認定から10日ほどがたった。死者をだす抗議活動がパレスチナ自治区ガザで続く一方、エルサレムでは普段の生活が戻りつつある。だが首都認定で今の経済面での共存が脅かされるのではと多くのパレスチナ人は不安を抱く。米国の対応を喜ぶイスラエル人との間に広がる心理的な溝。エルサレムを歩いて声を拾った。

パレスチナ人による襲撃事件があった中央バス発着所は普段のにぎわいをとり戻していた(14日、エルサレム)

 14日午後、エルサレム中央バス発着所は家路を急ぐ人でごった返していた。4日前にはここで首都認定に抗議するパレスチナ人の男が、イスラエル人警備員をナイフで襲う事件が起きた。会社員の男性(32)は「普段の生活に早く戻ることが、テロへの抵抗になる」と静かに話した。

 金曜礼拝があった15日。旧市街の一部ではパレスチナ人とイスラエル治安当局の小競り合いが起きた。ガザ地区では投石する若者などに対し、装備で圧倒するイスラエルの治安当局が実弾やゴム弾で排除に乗り出した。
 米政権の首都認定以降、パレスチナ人の死者は8人、けが人は1000人単位に上る。ガザ地区での衝突は当分やみそうにない。だがエルサレムでは「平穏な日常に戻りつつある」(エルサレム警察のヨラム・ハレビー署長)との声が多い。

 1967年の第3次中東戦争以降、イスラエルは、ユダヤ教、イスラム教、キリスト教の聖地がある東エルサレムを占領し、西側と併せたエルサレムを「不可分の首都」と位置づけてきた。東エルサレムにはイスラエルの占領に反発するパレスチナ人が多く住む。

 パレスチナ人はトランプ氏の首都認定に強く憤って抗議デモに加わるが、経済面ではイスラエルへの依存が強い。東エルサレムに住むマレクさん(35)の勤務先はイスラエルの建設会社。「イスラエルは許せないが、いまの会社は給料がいい。政治とは分けて考えるしかない」と話す。
 パレスチナ人の運転手のムタズさん(40)は「トランプは余計なことをした。ユダヤ人の観光客が減ってしまう」とぼやく。世界からユダヤ系の観光客が押し寄せるユダヤ教の祝祭が先週から始まったが、今年は治安への懸念で客足は鈍い。観光客減は、サービス業や建設業に就くパレスチナ人の生活を直撃する。
 一方、イスラエル人の間では「トランプ氏は正しいことをしただけなのに、なぜ世界中はこんなに大騒ぎするのか」(会社経営者のヒレルさん、60)という反応がほとんどだ。高校教師のオリットさん(45)は「教育や医療が充実するイスラエルにいる方がパレスチナ人も幸せなはず」と本音をのぞかせる。日々の生活では混じり合う両者だが、心理的な距離は遠い。

 今回の旧市街やヨルダン川西岸の抗議行動は、過去の「インティファーダ(反イスラエル闘争)」に比べて規模が小さいとされる。「激しい抗議は犠牲も伴う。団結を呼びかける強いリーダーもいない」(パレスチナ人ジャーナリストのハレド・アブトアメフ氏)
 米国の首都認定に反発しても、イスラエルと無縁の生活は考えられない。トランプ氏の判断は、パレスチナ人の怒りや苦悩を深めている。  (エルサレムで飛田雅則)

(転載貼り付け終わり)

副島隆彦です。エルサレムの現地は、落ち着いて来ています。私の話を続けます。


 まず、エルサレムぐらいは誰でも知っています。ここにイエス・キリスト様も入ってきて、そのたった1年後の、紀元後30(AD30)年に、処刑された。36歳だった。世界史の年号は、キリストが生まれた年が「紀元1年、元年」と決まっている。が、西洋暦(太陽暦、グレゴリオ暦の修正)で計算し直したら、紀元前6年だったようだ。だからイエスは36歳でエルサレムで処刑された。

 私は、徹底的に話します が、聖地エルサレムの東側にやや高い処(ところ)があって、そこを「神殿の丘」という。これをまず覚えなさい。アラビア語では、アルハラムアルシャリーフ(al-Haram al-Sharif)という。これは長方形をしていて、周りは30メートルぐらい城壁で囲まれている。ここが神殿であり、古代からの王宮でもある。この中央というか、北のほうに、例の金ピカの「岩のドーム」そして、南側にアル=アクサー・モスクがある。前掲した地図で確認してください。 長方形で縦300メートル、横100メートルぐらいあると思う。ここは神聖なる聖地であり、今はイスラム教の寺院(モスク)が2つある、ということだ。

 この岩のドームから、預言者(イスラム教の創業者)ムハンマドが昇天(ascension、 アセンション)した、となっている。この神殿の丘に連なる南側にシオンの丘(ザイオンの丘)が続いている。 このシオンZion の丘への、ヨーロッパ諸国からの、虐められたユダヤ人たちの、帰還運動(何と3200年ぶりの)を、 Zionism (シオニズム、ザイオニズム))という。1896年の、フランスで起きたドレフユス事件(1894年)のあと、・テオドール・ヘルツル Herzl という男が、ウイーンで、そしてスイスのバーゼルで、1897年に、「さあ私たちは、エルサレム(シオンの丘)に帰って、建国しよう」運動を始めた。 これで、今のイスラエルとパレスチナの骨肉の紛争が起きた。左翼知識人たちだったら、一応、誰でも知っている、このシオニズムの話は、一端、横に置く。

このユダヤ教の最も神聖な神殿が、至聖所(しせいじょ。Oracle オラクル)と言う。ますこのコトバを知りなさい。ここが今は、だから、岩のドームになっている。だから、大ゲンカになるのだ。 アラビア語でクバ・アルサクラ Qubba al-sakhra という。そしてその南に、もう一つアル=アクサー・モスクがある。

 この「岩のドーム」は西暦690年に、預言者ムハンマドの娘婿アリーによってつくられたらしい。そして20年後ぐらいの710年に南のアル=アクサー・モスクもつくられた。だから今は、「神殿の丘」にイスラム教の寺院が二つあるわけだ。壁には青いタイルが張られ、丸屋根(ドーム)は、きらきら輝いているのが岩のドーム。ここがもともとは何だったかは、これから詳しく話します。

 もともとはユダヤ教の最も聖なる場所だ。日本語で至聖所と訳す。だから皆、分からなくなる。知識人たちも。いいですか、知ったかぶりはナシですよ。英語ではオラクル(Oracle)という。オラクルとは、巫女(みこ)とか、預言をする神官をいう。神の言葉を人々につなぐ人で預言者と言ってもいい。これは、古代ギリシャではデルフォイ(Delphoi)という都市にあって、このデルフォイの巫女たちがオラクル。そして、神託(しんたく)、ご託宣(たくせん)もオラクルだ。

 もともとユダヤ教の聖なる場所だったこの至聖所(オラクル)ができたのは、紀元前1200年ぐらいだ。
紀元前1250年に、モーセがユダヤ人たちを引き連れてエジプトから脱出した。この紀元前1250年 を、あなたが、本当に知識人でありたければ覚えてください。

 そしてモーセたちは、40年間シナイ半島をさまよった。この紀元前1250年からの話を、『出(しゅつ)エジプト記』 Exodus (エグソダス)という。これがユダヤ教の唯一、最高の聖典だ。 この他に、後に、「モーセ5書」 Torah トーラと呼ばれる、『創世記』(Genesis ジェネシス)とか、『ダニエル記』とか、『ヨシュア記』、『申命(しんめい記)』とか、私、副島隆彦も名前しか知らないが、後から出てきた『エゼキエル書』などとは、較(くら)べものにならないぐらい、『出エジプト記』は重要だ。 なぜなら、他の 『創世記』(天地創造から書いている)やらは、紀元前3000年ぐらいの、メソポタミア文明(チグリス、ユーフラテス河の地帯)の帝国や王国の話から、創作したものだからだ。

 モーセたちが、エジプトから出てきた人々だ、ということは、このあと、ユダヤ人、を名乗り始める、モーセたちは、真実は、エジプト人なのだ。 このことは、今も言ってはいけないことになっている。
 だが、世界中で、気づいている人たち(本当に頭のいい人たち)は気づいている。 どうも、ヒッタイト(ヒッティー)帝国(紀元前1600年頃、トルコで生まれて、最強になる)と、エジプトの王朝(帝国)が、地中海沿岸(すなわち、フェニキアや、パレスチナや、今のシリアあたり)を、奪い合う戦争を、ずっと続けた。

 決着がつかないので、停戦、休戦、そして平和条約を結んだ。 その証拠は、重要な歴史資料として、双方の帝国に残っている。世界史をきちんと勉強した人は、皆、このことを知っている。  だから真実だと証明された。

 詳しく書くと、BC(紀元前)1300年丁度に、ヒッタイトのムワタリ王 と、エジプトのラムセス2世
が、カデシュというところで戦った。  なかなか決着が付かないので、4年後に、ヒッタイトの後継者の王のハットシャリ王 と、 ラムセス2世が、交渉をして、平和条約(=講和条約、戦争終結条約)を結んだ。 その文書が、今も双方に残っている。

 それから34年後が、BC1250年で、モーセたちが、ぞろぞろと、「出エジプト」で、カナーンの地(パレスチナ)に向かって出発、移動 し始ののだ。そして50年後の、BC1200ぐらいから、入植、植民した。 都市を築いて塀を回らし、礼拝所(だからこれが至聖所だ。後に、神殿の丘になる)を作って、
先住民である、カナーン人や、アモリ人や、アッカド人と戦って、領土を作っていった。それでも、ずっとしぶとく、パレスチナ人( ペリシテ人 = ファラシー )はずっと、ずっとこの地に残り続けた。

 だから、モーセたちは、実は、エジプトを、自発的に脱出したのではなくて、どうも、「あっちの方に、北の方に、カナーンという豊かな土地があるから、移民、植民しにゆけ」とエジプト王(ラムセス2世)に言われて、屯田兵(とんでんへい、パイオニア、開拓農民 )のようにして、移動していったエジプト人だろう。 こう考えないと自然ではない。ただし、モーセたちは、この次期に、すでに強烈な宗教を作り始めたようだ。 彼らが、このあと、「自分たちは、ユダヤ人だ」と言いだし、ユダヤ思想(ユダヤ教)を創作して、自らをユダヤ人だと名乗り、( だが、さらに真実は、現在のユダヤ教が成立したのは、紀元後200年代の、ミシュナー が、成立し始めた頃だ)そして、今のイスラエル(ここを別名パレスチナという)を作ったのだ。

 だから、エジプト人の貧しい農民たちが、ヒッタイト帝国が、完全には支配しきれなかった辺境の地で、どちらの領土だとも確定していなかった、カナーンの土地(パレスチナ)に、次から次に、勝手のどんどん入植してきた、というが真実だろう。

 この時期のこと書いているから、『出エジプト記』という本(ビブロ)が、唯一の、最高の経典、聖典(Canon 、キャノン、啓典)であり、世界史上の重要資料だ。

 モーセは途中で死にました(紀元前1210年とされる)が、その10年後の紀元前1200年ごろ、モーセの後継者のヨシュア Joshua と、それよりも早く、女預言者で弟子のデボラ と 指揮官のバラクの2人が、ユダヤ人たちを引き連れて、「カナーンの地」「約束の地」である今のパレスチナに到着した。そして、おそらく今のエルサレムを本拠地として丘に、自分たちの宗教のための礼拝所を作っただろう。それが前述した至聖所(オラクル)だ。

 モーセの跡継ぎのヨシュアは、頭が良くて、強力な指導者だったようだ。入植した先で、「敵たち」を打ち破ってゆく。 このユダヤ人(エジプトから北上してユダヤ人になった人たち)たちは、
今の エルサレムから北東に 50キロぐらい行った、エリコ という都市から、侵入、侵攻したようだ。

 そして、「旧約聖書」の 「列王記」を 読むと、激しい闘いを、カナーン人やパレスチナ人たちと、
200年ぐらい続けている。 いや、もっと後までだ。 恐ろしいぐらいの残酷な戦いであって、
名君の 始まりの、紀元前丁度1000年の、サウル王( その次が、英雄でもある ダビデ王)は、戦いに負けて、息子たちと、皮を剥がれて、敵の城壁に、死体をずらーと吊されていた。こういう話が、ずっと続く。その応酬だ。それが、旧約聖書だ。

 だけど、これは、当時のユダヤ人たちが残酷だったということではなくて、この時代は、メソポタミア文明の、他の文明も、そういう 激しい殺し合い をずっとやったのだ。それが人類の歴史だ。

 モーセの時代から200年後、丁度、紀元前1000年のダビデ王の子で、後継ぎの ソロモン王(紀元前967年、王位に)が、至聖所を大修理して立派にしたので、これを、今も  King Solomon’s Temple 「ソロモン王の神殿」と呼ぶ。これは英語だが、この時からが、「第1神殿時代」だ。今もこの呼び名だ。そして、ここが、現在は、イスラム教では、アルハラム・アルシャリーフ「神殿の丘」だ。そしてここにイスラム教の寺院が2つある。
 
 きらきら輝く丸屋根の、岩のドームは、故にもともとはユダヤ教の至聖所だ。モーセたちは、自らユダヤ人 (Jews ジュー)を創作し、成り、そして唯一神のヤハウエだけを信じると、した。 だが、このヤハウエ Yahweh (あるいは、エホバ Jehovah )は、本当は、エジプトで紀元前1300年頃に起きた、アマルナ革命を、憎んでひどく嫌った、神官の集団である、アメン神なのではないか。アメン神官の集団が、神そのものだったろう。 

 アーメン Amen というコトバは、ものすごく重要だ。誰でも知っている。ところが、この「アーメン」について、欧米の神学者も歴史学者たちも、世界中で、「祈りのコトバだ」と、むにゃむにゃ言うだけで、何も明らかにしない。

 このアメン神、あるいはヤハウエへの捧(ささ)げ物(これがホロコースト)として、至聖所の中の脇で、殺した羊の血を抜いて献上した。しかし、本当の本当は、「私たち神への信仰を証明するために、自分の長男坊の男の子を殺して、献げよ」だったようだ。

 だから「神殿の丘」の周りに、紀元前1200年から、現在は旧市街にとい街にユダヤ人たちが住んだ。 丁度、紀元前1000年ぐらいが、ダビデ王の時代だ。この年号を覚えなさい。正確には、ダビデが、前サウル王の死で、跡を継いだのは、紀元前997年だ。この時が、イスラエル王国 が一番栄えた時代で、サウロとダビデとソロモン、の3人の王の統治がそれぞれ30年ぐらいずつ続いた。このときユダヤ民族は、大繁栄した。
 そして3人目のソロモン王(キング・ソロモン)の息子が、アブサロムで、こいつは能力がなかったために父親の偉業を継げず衰退が始まった。欧米白人は、自分のバカ息子のことを、「ああ、アブサロム、アブサロム」と嘆く。今は紀元後2000年ちょっとなので、ユダヤの3人の名君(優れた王)に時代から3000年たっている。

 だが、イスラエルが、帝国(エンパイア)だったことは一度もない。イスラエル(ユダヤ民族)は、いつの時代も、周囲の強国(覇権国、帝国)に脅かされた。あるいは屈服しした属州、朝貢国(ちょうこうこく)だった。3000間、ずっとそうなのだ。このkとを、日本人の知識層でも自覚がない。ヒッタイト帝国が滅んだ跡の、アッシリアや、新バビロニアや、アケメネス朝ペルシア帝国などの帝国のことを、しっかり知っている日本人は、あまりいない。 勉強不足というよりも、知恵(知能)が足りないのだ。

 さて今回のエルサレムの首都認定問題で、一番強硬なのは、ニューヨークに住んでいるユダヤ人の金持ちたちだ。

 イスラエルの人口は850万人ぐらいだ。このうちユダヤ人は600万人ぐらい。残りはアラブ人でほぼパレスチナ人。ユダヤ人と結婚したり、合いの子になっていたりして複雑だ。ユダヤ人も、アラブ人も 人種的には同じセム族 Semite セマイトという。 だから、反ユダヤ主義の人種差別を、 anti -Semitism アンチ(アンタイ)セミティズム という。

 ところが、アメリカ合衆国には800万人ぐらいのユダヤ人がいる。本当は2000万人いる。これをクローゼット・ジュー Closet Jews 、 隠れユダヤ人という。表面上はアメリカ白人でキリスト教徒のふりをしている。だが、ユダヤ人の血が混じっている。
 例えばヒラリー・ロッダム・クリントンなどは、ロッダム家は、オランダからやってきた商人の家系だ。だからユダヤ系だ。だから、ヒラリーはニューヨーク州選出の上院議員にもなれた。ニューヨーク州は、ジューヨーク “ Jew York “ と言われるぐらいユダヤ人が非常に強いところで、大金持ち、経営者がたくさんいる。

 彼らがトランプを突き上げた。トランプが、ユダヤ人の団体に、大統領選挙中に公言して約束とおりに、どうしてもエルサレムを首都と認めよ、ということだ。そして、この決定は、実は、アメリカ民主党の 決議でもある。1995年に「イスラエル首都法」という法律が出来て、クリントンもオバマも、「エルサレムを首都と認める」の立場だったのだ。だから、今回、よごれきったアメリカのリベラル派勢力である民主党は、トランプを一切、全く、何も批判しない。面白い現象だ。

 ここに今は二つのイスラム教徒のモスクがあるが、それらをぶち壊して、もともとのユダヤ教の神殿、すなわちKing Solomon's Temple に戻したい。Temple テンプルを、日本語では、お寺と訳して、神社のことをShrine  シュラインと言うと決めている、が、それは日本人が勝手に言っただけで、このコトバの区別がつく日本人の知識人はいないだろう。だから、ユダヤ人たちは、今の岩のドームをぶち壊してKing Solomon's Templeを復活させたい。元々の、3200年前に、戻したい(笑い)。

 しかし、それをやったらどうなるか。本当に第3次世界大戦だ。世界中に18億人のイスラム教徒がいる、東アジアのマレーシアやインドネシアもイスラム教国だから、黙っていません。おそらく、怒ったイスラム教徒が、自爆攻撃(スーサイダル・ボミング suicidal bombing )の突撃隊となって、これが何千人か何万人では済まなくなる。だから、そんな「モスクをぶっ壊すこと」は絶対にできない。 しかし首都と認定する、ぐらいは出来るし、やりたかったのだ。

 エルサレムの旧市街を、地図で示すと(前掲の写真をもう一度、しっかり見なさい)4つに分かれている。南のほうにアルメニア正教の人たち。アルメニア人が何百人が住んでいる。これはキリスト教の古い宗教だ。アルメニア国はトルコの東側にありますが、苦難を背負った商業民族で、ユダヤ人とよく似ていると言われています。私は、最近、1918年に、トルコによってアルメニア人が、150万人、虐殺された、という最新の映画を見た。アルメニア問題は今日は話さない。

 エルサレムの旧市街の西側はキリスト教徒、そして北側にイスラム教徒であるパレスチナ人に地区。パレスチナ人たちは貧乏です。物売りを懸命にしながらエルサレムに住んでいる。観光客相手の汚い土産物屋は、全部パレスチナ人だ。ヴィア・ドロローサ(悲しみの道)沿いはずっとパレスチナ人の物売りたちだ、と、現地に行った編集長が言った。
そして当然のように、現在の支配者であるイスラエル人が、威張って住んでいる。彼らが差別されて身を縮めていた時代が何百年もあったのだろうが。このように旧市街は四つに分かれている。
 
 旧市街のキリスト教徒地区に、キリストが捕まって、連れていかれて、このあとすぐに磔刑(たっけい。はりつけ、磔=はりつけ=の刑)にされた場所と言われる「聖墳墓教会」(せいふんぼきょうかい)があります。ここがゴルゴダの丘、そのものだ。

 キリストが処刑されたのは、副島隆彦は決めつけるが、前述したとおり、紀元後30年だ(36歳)。聖書にはゴルゴダの丘とかゲッセマネの園(ここで捕まったとも聖書に書いてある)とかが出てくる。このゴルゴダの丘、すなわち今の聖墳墓教会とは、イエス・キリストを応援していた金持ちの屋敷の庭らしい。この考え(学説)が最近は一番、強い。 

 ここで、ついでに言っておくが、エルサレムの南、10キロぐらいのところにある ベツレヘムで、そこの馬小屋で、イエスが生まれた、となっている。これは、今では、真っ赤なウソだ。世界中でバレている。イエスは、「ナザレ Nazareth のイエス」なのであって、北の方の ナザレで、生まれて育った。 

 そして、30歳から、自分の信念に基づいて、「私は、人類(人間全部)を大事にしたい。救いたい」という、それまでの人類史に存在しない、全く新しい、救済(サルベーション)のための宗教を始めた。だからエイスは、偉大なのだ。だから、キリスト教が、彼の死後、爆発的に、世界中に広がった。 インドのお釈迦さま(ゴータマ・ブッダ)も、それからイスラム教のムハンマドも、この救済(サルベイション)の思想を説いたので、それで、世界中にドカーンと広がったのだ。

 「人間を大事に扱え。女たちを虐(いじ)めるな。人間を動物みたいに扱うな」と主張したから、それで世界宗教になった。残念ながらユダヤ教は、そういう宗教ではない。だから広がらなかった。

 イエスは、36歳で死んでいるから、布教活動は、たったの6年間だ。ナザレから東のガリラヤ湖の周辺をうろうろして、それから、ヨルダン川を南に下(くだ)って、洗礼者(バプテスマの)ヨハネ John の洗礼(バプタイズ)を受けた。それから、エルサレムに入った。旧市街の中を自由に動き回ったとは思わない。すでに、イエスの布教活動は、ローマ帝国からの現地派遣の軍事総督(ぐんじそうとく。pro consul プロコンサルの ピラト(Pilate ピラトゥス、 パイラト)にとって、危険な扇動者(ゲマゴーグ)と見なされていたようだ。

 ナザレは、イスラエルの北の方の、ガリラヤ湖 Sea of Galilee の西の方だ。そして、エイスの真実の奥様であり弟子(使徒、アプストル)でもあった マグダラのマリア Magdalene Maria の生まれ育ったマグラダ Magdala の町が、ガラリア湖のほとりにある。イエスが布教を始めて、1年後ぐらいの 31歳(紀元後25年)にマリアと出会って結婚した。そして、一緒に布教の流浪を続けた。まわりに信者として弟子(使徒)たちが出来た。

 イエスは、普通の男で有り、人間で有り、奥さんと、子供もいた。父 ヨセフ Joseph は、 言われているような、ただの貧しい大工ではないだろう。それなりの家の出の人だったようだ。そうでなければ、イエスがそれなりの教養を身につける事は出来ないし、まわりから尊敬されない。

 イエスは、ただの人間であり、普通の男である。このことを言うと、ローマ・カトリック教会が非常に困るのだ。ローマ教会ことは、大嘘つきで、人類の諸悪の根源である。私、副島隆彦が、このことをずっと書き続けるので、だから、私は、いよいよ、日本の土人の支配階級(エスタブリッシュメント)から嫌われる。でも、私は黙らない。

 イエスは普通の人間だった。この思想を説くのが、欧米の、独特のプロテスタントの一種である、ユニテリアン =フリーメイソンの思想だ。
イエスが、殺されるまで、どのように6年間、布教したかは、ここではもう書かない。

 イエスは「最後の晩餐(ばんさん)」をした、エルサレムの市街の外の、イエスの支持者の家で、12人の弟子たちと一緒に土間に、寝ていた。そこを突然、ローマ兵に襲撃されて、イエスだけが捕まった。ほかの弟子たちは逃げた。そして、捕まった次の日の朝には、もう、そこから1キロぐらい離れた今の聖墳墓教会(せいふんぼきょうかい)の場所にローマ兵たちが、十字架を組み、さっさと殺してしまった。ピラトの命令だけで、裁判もなければ何もなかったはずだ。後で、またこの話をします。

 話をもとに戻す。「神殿の丘」(ソロモン神殿)を。ユダヤ人が取り戻す運動を一番激しく強硬に主張しているのがユダヤ系アメリカ人の富豪たちだ。その代表が「ラスベガス・サンズ、という大手のカジノ業者で、サンズ・グループというギャンブル興行主の大親分のシェルダン・アデルソンだ。

 本当に、こういうむくつけき顔をした、恐ろしい男でないと、博奕(ばくち)業の大物になんかなれない。 このアデルソンが、トランプに「約束を守れ。少なくともアメリカ大使館はエルサレムへ移せ、エルサレムがイスラエル国の首都だと認めろ」と、うるさくせっついた。そのように報道もされた。

 トランプという人は、大金持ちの大きな勢力に対しては頭を下げる。
「わかった、わかった」と、嫌々(いやいや)ながら、エルサレムを首都と認め、アメリカ大使館をエルサレムに移すと宣言した。それが12月6日だ。しかし大使館を移すと言いながら4~5年先ですから、何の意味もない。

 何が問題となるかというと、先ほど言ったように、本当に神殿の丘をぶち壊すのか、だ。今から3200年前、ユダヤ教の至聖所(オラクル)のFoundation Stone「基礎石」という平たい岩の上で、ささげ物(ホロコースト)のヤギや牛を殺して儀式をやっていた。
そこが大昔は、ユダヤ教の本当の聖なる場所だった。そこが今は、岩のドームとしてきらきらぴかぴか光っている。世界中のユダヤ人は不愉快で仕方ない。
 
 前述したとおり、アメリカには800万人のユダヤ人以外に、クローゼット・ジューが2000万人もいる。ヨーロッパから迫害を逃れてやってきた人たちが多い。表向きはユダヤ人となっていない人たちもたくさんいる。だから3000万人いるかもしれない。だから最大のユダヤ人の勢力はアメリカ合衆国にある。

 今、ドイツにはユダヤ人は20万人、フランスには50~60万人、イギリスにも100万人ぐらいしかいないと思う。ヨーロッパのユダヤ人のほとんどはアメリカ合衆国に移っている。この人たちの政治力が強いので、今回の事態になっている。
 
 おもしろいことには、トランプが最初に事前に電話をしたのは、パレスチナ解放機構( PLO パレスチナ人の国会でもある)の議長であり、だから、パレスチナ国の大統領であるアッバースだ。アッバースにいち早く、電話をかけている。アッバースは、エルサレムから10キロぐらい北の、ラマラ(ラマッラー)に居る。ここはヨルダン川西岸(せいがん)というイスラエルの占領地だ。東エルサレムの外側だ。イスラエル軍が占領していて、コンプリートの壁に包囲されたラマラの町の、パレスチナ人だけが住んでいる地区ではないが、ぐじゃぐじゃにコンプリートの壁で、ユダヤ人たちの住居地(清潔な地区)と分けられている。アッバースは、2004年に死んだアラファト議長の後継者だ。

 トランプは彼に、「アッバースよ。オレは、今から、エルサレムをイスラエルの首都と認める声明を出すが、何とか、我慢してほしい。その分、そのうちお返しをするから、わかってくれ」と話した。
 この真実を世界中の指導者たちは皆知っている。だが、日本の知識人層と日本政府と官僚たちが知っているかわからない。知らない人間は、知能が低い、ということになる。外務省の一番上の人間たちでも、欧米の白人世界と脳でつながっていない。英語で話して読んで考えている人たちは、アジア人でも今回の事態を知っていて、「トランプにも立場があるんだろうなあ」と理解している。

 昨日やおとといも、パレスチナで石を投げたり抗議行動をして何人か死んだと報道されているが、抗議行動が出ているだけで激しい運動にはなっていない。このことを日本人も理解すべきだ。その次に、トランプはイスラエルのネタニヤフ首相に電話して、「お前の望み通り、エルサレムを首都として認めるよ」と伝えた。ネタニヤフというのは、アメリカの言いなりの男で、我らが安倍晋三と同じような、卑屈な腰巾着(こしぎんちゃく)だ。

 ここから、もっと難しいことを説明する。私が佐藤優氏と出した 『世界政治 裏側の真実』という本ですが、本当のタイトルは、『忍者・佐藤優と狂犬・副島隆彦の手裏剣対談』といいます。ただ、それではあんまりだ、ということでタイトル(書名)は変わった。この本の、24から26ページをここに載せるので、読んでください。

 それでもまだ、「私は読む力がない、考える力がない。むずかしい言葉が出てくると、区別がつかない。よくわからん」と言う日本人たちが、たくさんいるので、どんなに知能が低いかを、私は1人でずっと怒って、苦しんでいる。副島隆彦がこの国では、大きな真実を、一番、分かりやすく説明できるのだ。だから何とか分かってくれー、と お願いしている。こういう事をどうしても言わざるを得ない。

 私、副島隆彦は知っている。 「ようやく、イランとイラクの区別がつくようになったよ」とか、「パレスチナと パキスタンは、違うんだー。知らんかった 」という程度のアホの人たち( 特に女)が、今もたくさん居る。日本人は、正直であるだけ、まだ、いい。 驚くべき事に、私の周りにも居る。この日本国民の恐るべき、低脳(ていのう)状態は、アメリカが仕組んで、このようなひどい被(ひ)洗脳国民にされたのだ。文部科学省の愚劣な低脳官僚どもの責任など言ってもどうにもならない。

 私が佐藤優に対談で語ったのが以下の通りだ。

 対談本で、私が話しているとおりだ。何がイスラエルとアメリカで問題になっているか。上の画像(写真)の文を真剣に読めば、なんとか分かるだろう。「ワンステイト・ポリシー」と「ツーステイト・ポリシー」というのがあって対立しているのだ。「ワン・ステイト(ひとつの国家)」の意味は、 この26ページに書いた。 
イスラエル国が、パレスチナ国家を否定して併合し、パレスチナ人はそこに住んだまま自治を認められない。イスラエル軍隊と警察が、言うことを聞けと制圧して、パレスチナ国家を否定してイスラエルに服従せよとなる。

 この他に、Gaza Strip ガザ・ストリップと言うが、地中海に面したところにパレスチナ人の飛び地(ストリップ)があって、ここに40~50万人いる。その南側はエジプトのシナイ半島で、つながっている。秘密のトンネルがたくさんあって、エジプト側から物資がいろいろ補給されている。ガザは、ハマスという団体がいて、パレスチナ人の国民議会(国会、PLO)の言うことを聞かなかった。が、ようやく最近は軟化して団結するようになった。

 このハマスという自治組織は、暴力団のような団体だとも言われているが、ガザ地区の民衆のための福祉事業などは。ハマスが懸命にやっていて人気がある。このハマスと、ラマッラー(ヨルダン川西岸)にいるアッバス議長がパレスチナ国家である。これは国際連合(the U.N. ザ・ユーネヌ 連合諸国)からパレスチナ国家として今では、認められている。日本を含めて大使館(事務所)がラマッラーに有る。

 ワンステイト One State に対して、ツーステイト・ポリシー Two Sate というものがある。イスラエルとパレスチナが今のままの状態で、2国家として共存するという政策だ。これしかない、ということです。このツーステイト・ポリシーしか、実際には、現実味ははないと副島隆彦も、上記の対談本で、はっきり言っている。

 1948年にイスラエル国が、突如、できて以来、United Nations(連合諸国)で恐らく80回ぐらい、ツーステイト・ポリシー(2国家共存政策)でやりなさい、と毎回、毎回、決議が出ている。 これに反対しているイスラエル政府は世界中から非難されている。このことを日本人は理解しなさい。 日本国内で、こういうことを説明する人がいないのだ。

 池上彰(いけがみあきら)氏が、出世の始まりの「NHKの子供ニューズ」の乗りで、
このことを説明すればいいのに、池上彰にも、いろいろ 裏があって、言えない。
だから、副島隆彦が言うしかないではないか。
他のムヅカシそうなことばっかり、書いている、言論人、新聞記者たちも反省すべきだ。自分たちだけで、「自分はアタマがいいのよ」というような記事、評論文ばっかり書いているな。

 イスラエルという国を、第2次大戦の終結後の、たった3年後に、国連からパレスチナの信託統治(しんたくとうち。トラステッド trusted )を任されていたイギリスに、刃向かうフリと、反逆のふりをして、イルグーン団( Irghun 、ユダヤ民族自衛軍事組織)という 危険な、テロ活動もする、軍事組織を指導した、 ダビド・ベン=グリオン という男が、今のイスラエルの、 創業者だ。建国の父だ。 今のイスラエルの指導者たちも、強硬な右翼は、皆、このベン=グリオンの忠実な弟子たちだ。 イスラエルでは、思想運動のために、自分自身で人を殺した前歴があるぐらいでないと政治指導者にはなれない。

 あの隻眼(せきがん、片眼)のダヤン将軍も、女首相になったゴルダ・メイアも皆、ベングリオンに手塩にかけて育てられた人たちだ。それなのに、日本では、このイスラエルの建国の父、ベングリオンの名前さえ、誰も知らない。知っていても話そう(書こう)とはしない。
 
 何という国だ。 イスラエルは、密かに300発の核弾頭を持っている。だから、北朝鮮も。「私たちも持つ。何が悪い」と言っているのだ。イスラエルの核保有の秘密は、BBC(英国国営放送局)が、こそこそと10年ぐらい前から、5秒間ぐらいだけ、申し訳なさそうに、ニューズの中で、チラと放送するようになった。アメリカでは報道しない。日本は、もって知るべき。 馬鹿野郎の、日本の 言論統制(とうせい)機関どもめ!。

 イスラエル本国 ではなくへ、ニューヨークのアデルソンのような強硬派のユダヤ人たちが、私たちは、ユダヤ教徒の聖なる場所の神殿の丘(オラクル)である、King Solomon's Templeを再建築するのだ。3200年前に戻すのだと言っている。

 だが、対談本の26ページに、私が書いたとおり、もしパレスチナ国家を否定してイスラエル国にしてしまうと、西岸地区(ウエストバンク)、すなわち、ヨルダン川西岸(せいがん)地区(地図で確認しなさい)まで、全部併合してイスラエル国の領土としてしまうと、今度はそこに住んでいるパレスチナ人たちに選挙権を与えなければいけなくなる。選挙権を与えないと独裁国家となって、デモクラシーではなくなる。
 
 ことろが、もしパレスチナ人たちに選挙権を1人1票で与えると、何と、今度はパレスチナ人のほうが800~900万人ぐらいになってしまう。先ほど言ったようにユダヤ人は600万人ですから、選挙で負けてしまう。負けたらイスラエル国会(クネセト )がひっくり返ってしまってパレスチナ人が首相ということになってしまう。だからワンステイト・ポリシーにはできません。それを一番よくわかっているのがネタニヤフたちイスラエルのユダヤ人たちです。

 できもしないことを、なぜ実行しようとするのか。ニューヨークの富豪のユダヤ人たちが強硬に言っているから。だからトランプがへらへらと間に立って、できもしないことを形だけやると言っているだけだ。今回の問題はゼスチャーだと世界中はわかっている。

 それでも 長い歴史の背景を持つ政治問題としては、大きな流れの中でのことだから、アラブ人、イスラム教徒たちにとっては不愉快なことだ。彼らは、イスラエル軍がそのうち、神殿の丘の自分たちの聖なる、岩のドームとアル・アクサー・モスクをたたき壊しに来るのではないかと思っている。だから抗議行動をしている。

 実は、強硬なユダヤ人たちによる、密かなる、「第3神殿 建設 運動」というのがある。 このことはあまり表面に出ない。
第1神殿時代は、イスラエル国の歴史教科書では、 「第1神殿時代  は、 ダビデ王の我建てたBC1006年から バビロン捕囚の時に起きた神殿崩壊 のBC586年まで」だとされる。 そして、「第2神殿時代 は、このバビロン捕囚のBC586年のあと神殿は再建築されてから、700年後の、ユダヤ戦争でローマ軍と戦って、神殿が完全に破壊された AD131年まで 」だ。 だから、今、ユダヤ人たちは、密かに、「第3神殿 建設 運動」を 始めている。この動きが怖いのだ。

 もっと歴史の話をしよう。過去の大きな歴史の理解がない。歴史年表の話になると、ほとんどの日本人は知能が低いから、極端に嫌(いや)がって、対応できなくなる。とくに理科系は、数学と物理学は、出来たのに、この歴史年表となると、上段ではなくて、頭が真っ白になって、思考力を失って、頭が壊れそうになる。ホントだぞ。

 今からほんの50年前、1968年の「第3次中東戦争(6日間戦争)で、イスラエル軍が激戦の末に、今のエルサレムの周りを含めたヨルダン国の領土まで侵略して奪い取った。そして今も占領している。イエスの物語にも出てくるヨルダン川の西岸地区(ウエストバンク)というのは、エルサレムから見たら東側だから、地図で見るとおり東側だ。

 エルサレムは、神殿の丘(シオンの丘)を挟(はさん)んで旧市街(西エルサレム)と東エルサレムに分かれている。ここにはパレスチナ人が多く住むが、ユダヤ人の新たな入植地にもなっている。ここも全部イスラエル軍が制圧している。ウエストバンク(西岸地区)一帯に入ってくる、新しいユダヤ教徒たちが入り込んできて、イスラエル政府(ネタニヤフ政権)の言うこともか行かないで、ずうずうしく家を建てている。その周りを、コンクリートの壁で防御する。

 最近の違法入植者の、大半はロシアから移住してきたユダヤ人たちのようだ。だから白人である。ロシア語を話すロシア人たちだ。これがものすごい勢いで100万人ぐらいまでにふえているようだ。だから貧しくて熱狂的なユダヤ教徒たちがこのウエストバンク、および東エルサレムのあたりにたくさん入り込んできて近代的な立派な家を建てている。その周りにパレスチナ人に襲撃されないように、至る所にコンクリートでできた6メートルぐらいの壁をつくっている。そうやってふたつの民族が隣り合わせで、憎しみ合って住んでいる。

 パレスチナ人にしてみればたまったものではない。もともと私たちの土地なのに、おまえたちが「勝手に建国して」、私たちの土地を取り上げて勝手に家をつくって住み込んできて、迷惑だと怒っている。それを世界中のイスラム教徒たち18億人が、パレスチナ人と同じ宗教ですから彼らに同情して応援している。

 ところが、この同情、応援が、実情としては、情けない感じになっている。サウジもエジプト政府も、他のアラブ諸国、イスラム諸国も、そんなに熱心にはパレスチナ人を助けない。“支援疲れ”で厄介者(やっかいものの)扱いになっている。ここに本当の問題が有る。
 
 ですから1967年の第3次中東戦争でイスラエルがエルサレムを占領しても、そこにはパレスチナ人が物売りや労働者で貧乏な生活をしながらたくさん生きている。

 複雑なのは、イスラエル軍が制圧しているのに、神殿の丘(アラビア語でアルハラム・アルシャリーフ)の中の、岩のドームとアル=アクサー・モスクは、イスラム教の宗教会議の指導者たちが管理している。イスラエルもここには手が出せない。

 実際はイスラエル軍がチェック(検問体制)しているから、アラブ人も自由に出入りができるわけではない。出入りするための門があって、イスラエル軍が朝から晩まで監視している。礼拝の日と認められた日にぞろぞろ入っていって、神殿の丘でずらっと並んで、例のお尻を並べて、イスラム教の礼拝をしている。それを嫌(いや)そうに、訝(いぶか)しそうな目つきで、イスラエルの軍隊が見ている。イスラエルの軍隊は若い女性たちもいて銃を構えて、アラブ人たちを睨(にら)みつけながら共存している。

 だからこの神殿への出入り口で、急に怒り出したアラブ人、パレスチナ人が、ナイフを振り回して、イスラエルの兵隊を刺し殺そうとして逆に殺されるという事件がしょっちゅう起きる。双方の憎しみが激しいというのはそういうことだ。
 
 そして、この出入り口の南側の低い土地に長四角の大きな平たい場所がある。それが「嘆(なげ)きの壁」だ。Wailing Wall ウェイリング・ウォール という、嘆きの壁ではユダヤ教徒たちが、「私たちは3200年間にわたって苦しい思いをした。苦難に満ちた民族だ。上の至聖所を取り戻したい」と言って、壁に頭をすりつけながら旧約聖書の祈りの言葉を唱えている。だから、この嘆きの壁自身が、神殿の丘の西側の壁そのものなのだ。そして見上げると、壁の上にある光り輝くイスラム教のモスクがある。あいつをぶち壊したい、取り戻したいと思っている。

 日本人は、この明白な事実を知っているようでいて、知らない。誰も簡潔に、簡単に説明しない。何に遠慮しているのか、私、副島隆彦には分からない。ユダヤ人たちの気持ちも分かってあげよう、という考えも大切なのだ。ところが、「私は、むずがしい宗教問題には、関わりたくない」と言って、顔を背けて、知らん顔をする。それで日本人は、ますます集団として、低脳(ていのう)になる。

 こういうことが分かると、ユダヤ人たちが神殿の丘(至聖所、ソロモン王の神殿)を取り戻したいと思う理屈もわかる。両方の考えを聞いて、中立の立場できちんと公平に見るといいのだ。 ユダヤ教徒にも正当な主張があるのだ、と理解しなければいけない。

 それがわからないから、頭が朦朧(もうろう)として、戦争が始まるのではないかと女子供たちが言いだす。大きな簡潔な知識を、誰も教えないからだ。いつの間にか タブー(禁忌、きんき))にしているのだ。自分は頭がいいと、思い込んで、自惚(うぬぼ)れている人間ほど、変な知ったかぶりをして、まわりに歪(ゆが)んだウソを教える。

(前編 終わり。つづく)

副島隆彦 記   
Posted by 春 ヲ 呼 プ at 09:13Comments(0)国際情勢

2017年05月09日

2017年、世界は変わるかもしれない


https://jp.sputniknews.com/opinion/201702223367161/

2017年02月22日
リュドミラ サーキャン

 2016年に端を発した流れの多くは、今年も国際情勢に大きな影響を与えながら続いていく。米国ではトランプ大統領が大統領としての一歩を踏み出し、英国はEU離脱プロセスを開始させ、欧州では複数の国が選挙を控えている。中国は米国のTPP脱退をうまく利用しようと試み、日本は対米関係発展の新たなベクトルを選択して対露関係を活性化している。

 英国のテレサ・メイ新首相は 国民の意思を実現させると約束し、EUとの2年にわたる離脱交渉の開始を約束した。交渉は3月末に開始されることになっているが、英国がどんな「離婚」条件を提示するのか、未だ明らかになっていない。EU離脱に極めて懐疑的な上院議員が状況を複雑化させる可能性があり、そのため、これら議員がプロセス開始をブロックする可能性もわずかながら存在する。

 フランスでは大統領選挙が行われる。第1回投票は4月23日に行われ、必要があれば、5月7日に決戦投票が実施される。国民はフランソワ・オランド現大統領の後継者を選ぶ。大統領候補の一人と目されているのが、「国民戦線」党首のマリーヌ・ルペン氏であり、彼女が決戦投票に進む可能性はかなり高いと考えられている。ルペン氏の公約のひとつが、フランスがEUに残留するのかどうかという問題だ。ルペン氏は英国でBrexit支持派が勝利したのを受けて、この問題を国民投票にかける意向を表明した。

 秋にはドイツで運命を決める選挙が行われることになっている。ドイツでは先日、大統領選挙が行われ、元外務大臣のシュタインマイヤー氏が当選したが、ドイツは連邦制をとる議会制共和国であるため、この国の主要な選挙はまさに議会選挙となる。現首相のアンゲラ・メルケル氏は4期目の出馬を決めた。2005年にドイツ保守派の党首として政権に就いたメルケル氏は、徐々に政治路線を変え、3期目を終えようとする現在は、欧州リベラル派の最後の砦と言われている。彼女自身が認めている通り、ドイツの次の選挙は社会の二極化が原因で特に困難なものになるだろう。

 国際安全保障に関する独立系のロシア人専門家、ヴィクトリア・レグラノワ氏は次のように言う:「Brexitは欧州全土に『主権化の行進』を起こす引き金となった。当然、何らかの否定的なプロセスは起こるだろうが、西欧諸国や東欧諸国のEUに対する不満とは裏腹に、各国が分離独立の道を歩むことは考えにくい。EUは今ほどゲルマン中心的ではなくなるだろうが、存続すると思われる。」

 アジアでも変動が予想される。たとえば、政治スキャンダルが長引く韓国の選挙だ。朴槿恵大統領には、汚職と部外者による国政干渉を非難する弾劾が提出された。この弾劾が近いうちに憲法裁判所で承認されれば、早期大統領選挙が5月にも実施される可能性がある。最も有力な大統領候補と目されているのが、野党「共に民主党」元党首の文在寅氏と保守派代表で大統領代行の黄教安氏である。

 日本では安倍首相とトランプ氏の会談を受けて、政府が今後の国際場裡での身の振り方を分析する。新たに米国務長官に任命されたティラーソン氏は以前、日本と韓国は自国領における米軍維持費用に十分に大きな貢献をしており、この地域における米国の新戦略の重要な要素となるのは日本と韓国との緊密な連携であると述べ、日米安全保障条約と米軍基地に関する日本の懸念を払拭した。その一方で日本は、早晩、ロシアと平和条約を締結し領土問題を解決するとの考えの下、ロシアと集中的な交渉を行っている。

 中国は引き続き、世界で大きな影響力を持つ二大国のひとつとして自国を位置付けており、経済面・政治軍事面において米国のライバルとして振舞っている。これに応える形で、米国がより強硬な政策に移行する可能性がある。米国がこの政策移行をどのように実施するのか、またそもそも実施するのかどうかによって、二大国間の関係においても、アジアのパワーバランスにおいても、多くのことが左右される。

 ヴィクトリア・レグラノワ氏 によると、トランプ氏は、アジアで米国のパートナーを驚愕させた選挙前公約のうち、TPP離脱を除いて、多くのことを諦めたという。これにより、いろいろなことが変わる可能性がある。レグラノワ氏は言う:「トランプ氏は現実主義者であり、米国の利益にとって重要なことと、そうでないもの区別する人間だ。当然、アジア太平洋地域における米国の軍事プレゼンスは維持され、場合によっては、強化されさえするかもしれない。その際トランプ氏は、日本が中国との間に抱える領土問題や経済問題において日本を支持するかわりに、経済問題やTPPに代わる自由貿易圏設定の問題において見返りを得ることも考えられる。私の考えでは、米国や日本が中国と対立することは、三国の経済的つながりが極めて強いことだけを考慮しても、あり得ないのではないだろうか。」

   
Posted by 春 ヲ 呼 プ at 11:30Comments(0)国際情勢

2016年09月27日

Live トランプとヒラリーTV討論

  
Posted by 春 ヲ 呼 プ at 08:56Comments(0)

2016年08月30日

4社に1社、公的マネーが筆頭株主 東証1部

http://www.nikkei.com/article/DGXLASGD26H74_Y6A820C1MM8000/?dg=1

4社に1社、公的マネーが筆頭株主 東証1部
市場機能低下も


2016/8/29 2:00

 「公的マネー」による日本株保有が急拡大している。日本経済新聞社が試算したところ、公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)と日銀を合わせた公的マネーが、東証1部上場企業の4社に1社の実質的な筆頭株主となっていることが分かった。株価を下支えする効果は大きい半面、業績など経営状況に応じて企業を選別する市場機能が低下する懸念がある。
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 GPIFは運用総額約130兆円の世界最大の年金基金。2014年に日本株の保有比率の目安を12%から25%へと大幅に引き上げた。日銀は金融緩和策の一環として上場投資信託(ETF)を買い入れている。7月29日に年間購入額を3.3兆円から6兆円へと倍増した。

 GPIFと日銀は信託銀行などを通じて間接的に株式を保有し、株式名簿には記載されない。そこでGPIFによる保有銘柄の公表データや、日銀が購入するETFの銘柄構成比を組み合わせて独自に試算した。

 GPIFと日銀を合わせた公的マネーは、東証1部の約1970社のうち4社に1社にあたる474社の筆頭株主となっており、日本株は「官製相場」の色彩が強まっている。TDK(17%)やアドバンテスト(16.5%)、日東電工(14.2%)などで保有比率が特に高く、コナミホールディングスやセコムなども10%を超える。企業側からは「長期に保有してもらいたい」(横河電機)などの声が出ている。

 東証1部全体でみると株式保有比率は7%強。国内の民間株主では最大の日本生命保険(約2%)を大きく上回る。政府の市場介入を嫌う風潮が強い米国では、公的部門の株式保有比率はほぼゼロ。国営だった企業が多く上場している欧州でも同比率は6%未満だ。

 GPIFと日銀の株式保有額は3月末で約39兆円と5年前の11年3月末比で約25兆円増えた。この間に日経平均株価は約7割上昇し、株価の押し上げ効果は大きい。日銀がETFを年間6兆円買うと、「日経平均を2000円程度押し上げる効果がある」(野村証券の松浦寿雄チーフストラテジスト)という。

 弊害も懸念されている。公的マネーは企業を選別せず、株価指数に沿って広く薄く投資するパッシブ運用が中心だ。その比率は日銀が9割超、GPIFも8割超にのぼる。

 大量の資金を業績などに関係なく投じると、市場の「価格発見機能」が低下し、業績や経営に難のある企業の株価も下支えされて資金調達などを続けやすくなる恐れがある。市場からの退出圧力が働きにくくなれば、「経営の規律が弱まり、企業統治の面でも問題が大きい」と三菱UFJモルガン・スタンレー証券の芳賀沼千里チーフストラテジストは指摘する。

 債券と違って株式には満期がないため、日銀は金融緩和の「出口」に向かう過程で保有するETFを売却せざるを得ないという問題もある。業績動向などに関係なく売りが膨らむ恐れがあり、「企業分析を重視する普通の投資家は手を出しにくくなる」(ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジスト)と日本株離れを懸念する声も出ている。  
Posted by 春 ヲ 呼 プ at 10:20Comments(0)金融

2016年08月24日

自由主義的グローバリゼーションの終焉

 
http://jp.sputniknews.com/opinion/20160824/2682106.html

2016年夏:地政学的状況が劇的に変化 嵐は訪れるか?

今から25年前、ソ連でその運命を決定する出来事が起こった。8月クーデターはソ連の過去にけりをつけ、その後の4か月間はソ連公式解体までの断末魔の苦しみとなった。

 超大国は多くの人にとって現実的ではないように思われた。しかしその後の数年間はロシア近現代史の出発点となった。ソ連崩壊から四半世紀の今夏の出来事も、大勢の専門家たちに、長い間それ以外選択の余地はないと考えられていた慣れきった世界秩序からの逸脱という、当時と同じような感覚を残している。なお複数の国にとってはすでに今、方向性や方針の変更が明らかとなっている。雑誌「グローバル政治の中のロシア」の編集長フョードル・ルキヤノフ氏は、スプートニクの対談取材の中でこのような印象を語った。ルキヤノフ氏は、今夏の重要な政治的出来事は、その規模や予測不可能性でひどく驚かせ、文字通り息をつく暇も与えないと述べ、次のように語っている-

 「一度に様々な出来事がたくさん起こった。その一つは、英国でのEU離脱に関する国民投票だ。米国ではドナルド・トランプ氏が共和党の大統領候補として正式に選ばれた。これは多くの人々にとって衝撃的で前例のない出来事となっている。またトルコでのクーデター未遂もそうだ。そして何より重要なのは、その結果だ。なぜならトルコでの最近の出来事は、アナリストにとってさえもあまりよくわからないプロセスを始動させたからだ。しかし、外国のパートナーたちとの関係に関する自国のシステムでトルコは真剣に方向転換する用意があるという印象がつくられている。特にロシアとだが、それだけではない。主な頭痛の種となっているのは、トルコとNATOの関係がどうなるのか今ははっきりしないというものだ。なお古い関係が続かないのは明白だ。これを背景にシリア(情勢)の明らかなエスカレーションがみられている。加えてウクライナ問題もある。ウクライナでもかつてのミンスクプロセス自体がもう役に立たなくなっている。すなわち、どこを見ても非常に深刻なプロセスだらけだということだ。」

 1980年代から90年代の外国での出来事は、根本的な変化として捉えられている。「冷戦時代」に存在していたグローバル・ガバナンスのモデルが見直されることはなかった。ただ互いに均衡をとる2つの超大国ではなく、米国という1国が支柱となった。期待されたのは、対立時に西側社会に役立つ構造を地球全体に拡大させることだった。しかし四半世紀を経過した今、そのような評価を疑問視することができる。最近の出来事は、質的な変化を意味している。現状は変わり、自由主義的グローバリゼーションは終わりに近づいている。ルキヤノフ氏はこのように指摘し、次のように語っている-

 「例えば、EUにとっての英国市民の決定だ。これはもちろん非常に重要なマイルストーンだ。これまでEUは拡大するばかりで縮小したことはなかった。それが突然EUに対する警報シグナルが鳴り出したのだ。しかもこれが最後ではないかもしれない。トルコではクーデターが失敗した。革命ではないとしても、これは非常に深刻な衝撃だ。そしてNATOにとっては、加盟国であるトルコなどが最近あたかもNATOは存在しないかのように振舞っている。そしてこれらの出来事全てが重要な傾向を明確に示している。第二次世界大戦後から今まで世界政治が構築されていた原則や、特に冷戦後のある種の西側中心主義だ。これは少なくとも形を変えつつある。すなわち西側は、どこからみても1991年の後に政治家たちが計画したような形にはならなかったということだ。

 現在すでに西側が別のものになる可能性が高いことが明らかとなっている。それは意図されたようなものではない。すなわちプロセスはソ連崩壊時に始動されたが、未だに続いているということだ。だがまさに今年、非常に重要なものがたくさん蓄積された。それらは今、再びグローバルな質を持つものへと変わろうとしている。これが2016年夏の主な政治的出来事の結果だ。」

 アジア太平洋地域はどうだろうか?韓国領内への米国のMD(ミサイル防衛)システム配備が朝鮮半島情勢を極限まで緊迫させ、今後数年間で今当たり前となっている地政学的状況を変える決定的要因となることはないのだろうか?ルキヤノフ氏は、次のように語っている-

 「私は、韓国のMD自体はあまり重要な要素ではないと考えている。重要なのは何が起こっているかだ。それは米中関係が将来的にエスカレーションする兆候が明らかに蓄積されているということだ。なお当事者たちは誰もエスカレーションを目指してはいない。口先では誰も関係悪化を望んではいない。だが出来事が進展する論理が、エスカレートする可能性へ向かわせている。この方向での深刻な出来事は、中国とフィリピンの領有権争いに関する国際仲裁裁判所の判決だ。裁判所は判決で完全にフィリピン側を支持した。この出来事が今後影響を及ぼすことに間違いない。一方で、中国が今後どのように反応するかはまだ明白ではない。」

 ルキヤノフ氏は、すなわちアジア太平洋地域でも非常に重要な出来事が徐々に蓄積されているが、その性質は欧州やトルコで起こっているようなものにはまだ移行していないとの見方を示している。

   
Posted by 春 ヲ 呼 プ at 17:00Comments(0)あ~あ

2016年08月24日

イタリア地震






  
Posted by 春 ヲ 呼 プ at 16:40Comments(0)災害・防災

2016年08月23日

ヒラリーさんの奇妙な行動


http://jp.sputniknews.com/us/20160819/2664843.html

医者、クリントン氏に恐ろしい診断を下す

米大統領共和党候補のヒラリー・クリントン氏は幾度も奇妙な振る舞いをキャッチされた。これはおそらく、疲労やストレスに起因するものだろう。しかしマスコミは、ただのストレスだけではないと疑っている。





マスコミはお互いをさえぎりあいながら、クリントン氏の医療データを複製している。
フォックスニュースがいわくクリントン氏の病歴からの抜き出しだと言い、次のように報じている。

「患者は2012年12月初めに発生した脳震盪の余病をわずらっている、患者には記憶喪失、手に負えない発作、意識の混濁が頻繁になっている。患者にはすでに「複雑部分発作」の診断が下された

また、クリントン氏は非常に奇妙な症状でたびたびキャッチされている。共和党を非常に巧みにコピーしていると考えながら、ワンワンと吠えた。ふさわしい場所だったようではあるが、適切である時間よりも物まねを非常に長く続けた。

これは全ておそらく疲労やストレスに起因するものだろう。しかし多くの有権者は、このような深刻な診断を下されたクリントン氏が大統領としてやっていけるのかを疑っている。











  
Posted by 春 ヲ 呼 プ at 14:00Comments(0)

2016年07月29日

日弁連での講演の「おまけ」部分

日弁連での講演の「おまけ」部分

http://blog.tatsuru.com/


日弁連の勉強会で「司法の役割と現代」というお題で講演をした。なが~い講演だったけれど、最後のほうで質疑応答があったので、その部分だけ採録(ただしコピーライトの関係で僕がしゃべった回答部分だけで、弁護士のかたたちからの質問はカット)。

【第一の質疑】
後の質問からお答えします。
道場やっていて、道場ではほぼ毎日稽古しています。それとは別に週に一回、寺子屋ゼミをやっています。これは大学院の授業の延長で、どちらでもいつでもお入りになれます。どなたでも、年齢制限はございません。
前の方の質問ですけれども、日本は反知性主義に支配されているというと、「じゃあ支配している人がいるんですね」というお話になりましたけれども、これは論理的には成立しません。ある破局的な事態が起きたときに、この事態を制御している人間がいると推論することはできません。すべてをマニピュレイトしている「オーサー」が存在するというのは、陰謀史観です。これは複雑な状況を単純化して把握したいと望む知性の怠慢がもたらすもので、むしろ反知性主義のひとつの現われです。
たしかに、今の世界は混乱しておりますし、その混乱から結果的に受益している人たちはいます。でも、別にこの受益者たちが世界の政治や経済をコントロールしているわけではありません。「風が吹けば桶屋が儲かる」からと言って、桶屋が気象をコントロールしていると推論することはできないのと同じです。今の世界は単一の「オーサー」によって操作されているわけではありません。それぞれの地域、それぞれの領域で、自発的に無数のファクターが運動している。もう人間のコントロールを離れている要素も多い。
例えば、今では株の売買というのはほとんどコンピュータのアルゴリズムがやっている。計算式が1秒間で千回というような速度で株の売り買いをしている。人間が株の売買やっているのであれば、いろいろ思惑があったり、みんながこっちを買うなら逆に張るとか、そういう個人的な経験則が関与するだろうし、大きな値動きがあったときに、うっかり居眠りしていて売買の機会を逃したというようなことだってあるでしょうけれども、もう今の株取引ではそういう個人的な「ノイズ」が関与する余地がない。機関投資家たちのコンピューター売買ではもうノイズが出ない。だから、わずかな入力で劇的な出力が結果することになる。わずかな値動きに反応して、世界中のコンピュータが同時に売り買いを始めて、株価が乱高下する。これはもう企業の事業内容とは無関係なんです。いきなり株価が急騰したり急落したりする。誰の責任でもない。この株価を誰が操作しているのだと言われても、別に誰も操作しているわけじゃない。コンピュータが勝手にやってるんですから。アルゴリズムを書いた人だって、別に世界経済を混乱に導くために邪悪な意図をもって設計したわけじゃない。すでに経済自体人間のコントロールを離れている。金融経済というのはそういうものです。もう生身の人間の生活とは関わりがない。
実体経済というのは人間の衣食住をベースにして動きます。人間の生理的欲求を満たすということが、経済活動のベースに、全部ではないけれど、重要な要素として関与している。こういう家に住みたい、こういう服を着たい、こういうものを食べたいというのは、どれほど幻想的であっても、ベースには身体があります。だから、実体経済で動いている限り、経済活動の規模には限度がある。人間の身体という限界がある。消費活動はどれほど倒錯的なものであっても、結局は身体という限度を超えることはできない。
イメルダ・マルコスは靴3,000足持っていたそうですけれど、そのあたりが個人所有できる財の数的な上限でしょう。一日三回履き替えて三年。それくらいが人間の想像力の及ぶ限界です。服だってそうです。一回に着られるのは一着だけです。重ねて何着も着るわけにはゆかない。飯だって一日に三度が適度であって、金があるからと言って、毎日四度五度とごちそうを食べていたらすぐに死んでしまう。家だってたくさんあってもしょうがない。夜寝られる家は一軒だけです。一時間おきに次の家に移動して、持ち家数を誇ってもいいけれど、寝不足で死んでしまう。消費活動には最終的に「身体というリミッター」がかかっている。実体経済は消費活動がベースです。消費活動である限り、それがどれほど幻想的な消費行動であっても、身体というリミッターは外せない。
でも、それではもう経済成長ができないということがわかった。身体というリミッターを外して、人間の経済活動を無制限のものにしようと考えた人がいた。それが金融経済です。
ここで起きている出来事はもう生身の人間の身体とは関わりがない。だって、これはもう消費活動じゃないからです。商品やサービスを買うわけじゃない。金で金を買うのです。株を買い、不動産を買い、国債を買い、石油を買い、金を買い、外貨を買う。これらはすべて金の代替物です。
もう現代の経済活動は人間の生理的要求を充たすためではなくて、お金の自己運動になっている。ただ、ぐるぐる回っているだけです。もう人間は関係ない。だから、極端な話、ある日パンデミックで世界の70億人が絶滅したとしても、その翌日に証券取引所ではアルゴリズムが元気よく株の売り買いをしているはずです。もう人間抜きで経済活動が行われている。
経済はもう成長しないのです。
経済活動には身体という限界があり、人間の頭数を無限に増やすことは地球環境というリミッターがあってできない。どこかでキャリングキャパシティを超えたら、人口は減り始める。
日本の場合は世界でも最も早く人口が減り始めた。これは自然過程なんです。でも、今のビジネスマンたちは無限に右肩上がりし続ける経済モデルでしか思考できない。だから、どうやって人口を増やすのか、ということしか考えない。でも、増えるわけないんです。このまま日本の人口は減り続けます。国土交通省が出している2100年の人口予測は6500万人から3800万人の間です。あと80年ちょっとで幕末くらいの人口にまで減る。経済成長なんかするはずがない。
この人口推移でなお経済成長しようとしたらできることはいくつもありません。
一つは戦争をすること。戦争というのは極めて活発な経済活動を導きます。どこでもいい、どこかに戦争を仕掛ける。戦争が始れば私的財産を洗いざらいひっかき出してマーケットに投じることができる。「欲しがりません勝つまでは」で社会福祉も医療も教育も、金にならないセクターには一文も投じなくて済む。軍需産業は大儲けできる。成金たちが車を買ったり、シャンペン飲んだり、豪邸建てたりすれば、そういう富裕層向けの小売り業も「トリクルダウン」に浴するかも知れない。
でも、戦争の場合は「負ける」というリスクがあります。ふつうどちらかが負ける。負けるとさまざまなもの失う。国土も国富も失う。その前に国民の生命財産自由が失われる。負けたら世界最貧国になるかも知れないけれど、もしかしたら勝つかも知れないから、とりあえず経済成長のために戦争をしようというような提案は、さすがどれほど愚鈍な政治家や官僚も(心で思ってはいても)恥ずかしくて口には出さないでしょう。
もう一つもこれに関連しますが兵器産業に産業構造をシフトすること。兵器産業というのは資本主義にとっては理想の商品です。ふつうの商品の場合、商品をマーケットに投下すると、ある時点でマーケットは飽和する。もう行き渡ったので、それ以上は要らないということになる。メーカーは付加価値をいろいろ付けて「新商品」を出すけれど、もうそれほどは売れません。でも、兵器には「飽和」ということがない。というのは、兵器の主務とは兵器を破壊することだからです。マーケットに兵器が投下されればされるほど、破壊される兵器の数が増える。対立や憎しみが激化すればするほど兵器へのニーズは増大する。「永久機関」という夢のテクノロジーがありますけれど、兵器は「永久商品」なんです。街を走っている自動車が他の自動車を壊すということは、交通事故以外ではありません。トヨタの車が日産の車見つけたら、車線を越えてぶつかって壊すというようなことは起こらない。でも、兵器の場合はそれが起こる。それどころか、自社製品だって手当たり次第に壊す。同類の商品を破壊するという機能に特化した商品ですから、経済成長が停滞した時代に製造業の人たちが兵器産業に最後の希望を見出して走り寄るのは当たり前なんです。経済合理性から言えば、それが当然なんです。僕が三菱重工の社員だったら「これからは兵器産業しかない」って社長に進言しますよ。実際にこの間経団連のえらい人が言っていましたね。「そろそろ戦争でも起こってもらわないと、経済が回らないから」って。それが本音だと思いますよ。
実際に経済成長率というのは、戦争や内乱やクーデタの国において非常に高いのです。2012年の経済成長率世界一はリビアです。前年にカダフィが死んで内戦状態のリビアが一位。2013年の一位が今話題の南スーダンです。内戦状態で統治機構が麻痺している国が一位。2014年の一位が内戦で荒廃したエチオピアです。どの年度でもトップ10の国名を見ればわかります。戦争や内乱やクーデタやテロで国内が荒れ果てた国ではその後急激に経済が成長する。当然ですね。そういう国では戦闘で社会のインフラが破壊されてしまったからです。社会的インフラというのは「それがなければ生きていけないもの」ですから、どんなことがあっても再建します。借金しても、税金上げても、とにかく作る。道路を通し、鉄道を通し、上下水道を通し、電気を通す。学校を作る、病院を作る、役所を作る。そして、戦争が起きるとまたそれが破壊される。また作り直す。その破壊と再建によって未来のために備蓄すべき国民資源はどんどん失われます。でも、共同体が生き延びるために長く使い延ばさなければならないストックを市場に投じればフローは増える。そして、驚異的な経済成長率を達成する。これが戦争経済の仕組みです。
もう一つ、経済成長のための秘策があります。それは日本の里山を居住不能にすることです。これも経済成長だけを考えたら、効率的な政策です。僕が今総務省の役人で、上司から「人口減少局面での経済成長の手立てはないか」と下問されたら、そう答申します。「里山を居住不能にすれば、あと30年くらいは経済成長できます」と。
国内の農業を全部つぶす。限界集落、準限界集落への行政サービスを停止して、里山を居住不能にする。故郷にこのまま住み続けたいという人がいても、もうそこにはバスも通らないし、郵便配達も行かないし、電気も電話も通りません。新石器時代の生活でもいいというのなら、どうぞそのまま住み続けてください。でも、犯罪があっても警察は来ないし、火事が起きても消防車は来ないし、具合が悪くなっても救急車も来ませんよ、それでいいんですね。そこまで言われたら、誰でも里山居住は断念するでしょう。みんな里山を捨てて都市部に出てくる。これで行政コストは大幅に削減できます。里山居住者は地方都市に集められる。離農した人たちには賃労働者になるしかない。仕事が選べないのだから、雇用条件はどこまで切り下げられても文句は言えない。そこで暮らすか、東京に出るしかない。そうすれば、人口6000万人くらいまで減っても、経済成長の余地がある。日本人全員を賃労働者にして、都市にぎゅうぎゅう詰めにして、消費させればいいんです。「日本のシンガポール化」です。
シンガポールの人には申し訳ないのですけれど、シンガポールという国は全く資源がないわけです。都市国家ですから。資源がない。土地もないし、水もないし、食べ物もない、自然資源もない。何もない。生きるために必要なものは全部金で買うしかない。だから、国是が「経済成長」になる。経済成長しなければ飢え死にするんですから、必死です。全国民が経済成長のために一丸となる。だから、効率的な統治システムが採用される。一党独裁だし、治安維持法があって令状なしに逮捕拘禁できる、反政府的な労働運動も学生運動も存在しないし、反政府的なメディアも存在しない。そういう強権的な社会です。日本もそういう社会体制にすればまだ経済成長できるかもしれない。
でも、日本にはシンガポール化を妨げる「困った」要素があります。それが里山の豊かな自然です。
温帯モンスーンの深い山林があり、水が豊かで、植生も動物種も多様である。だから、都市生活を捨てた若い人たちが今次々と里山に移住しています。移住して農業をやったり、養蜂をやったり、林業をやったり、役場に勤めたり、教師になったり、いろんなことをやっている。今はたぶん年間数万規模ですが、おそらく数年のうちに十万を超えるでしょう。都市から地方への人口拡散が起きている。政府としてはそんなことをされては困るわけです。限界集落が消滅しないで、低空飛行のまま長く続くことになるわけですから、行政サービスを続けなければいけない。おまけに、この地方移住者たちはあまり貨幣を使わない。物々交換や手間暇の交換という直接的なやりとりで生活の基本的な資源を調達しようとする。そういう脱貨幣、脱市場の経済活動を意識的にめざしている。ご本人たちは自給自足と交換経済でかなり豊かな生活を享受できるのだけれど、こういう経済活動はGDPには一円も貢献しない。地下経済ですから、財務省も経産省も把握できないし、課税もできない。これは政府としては非常にいやなことなわけです。
それもこれも「里山という逃げ場」があるせいだからです。だから、この際、この逃げ場を潰してしまう。総務省が主導している「コンパクトシティ構想」というのがありますけれど、これはまさに「里山居住不能化」のための政策だと思います。
すでに日本各地でコンパクトシティ構想が実施されていますけれど、農民たちを農地という生産手段から引き剥がして、都市における純然たる消費者にする計画です。それまで畑から取ってきた野菜をスーパーで買わなければならないようになる。もちろんGDPはそれだけ増えます。本人の生活の質は劣化して、困窮度が高まるわけですけれども、必要なものをすべて貨幣を出して買わなければいけないので、市場は賑わい、経済は成長する。
里山が居住不能になれば、地域共同体も崩壊します。伝統芸能とか祭祀儀礼もなくなる。そもそも耕作できなくなったら農地の地価が暴落する。ただ同然になるけれど、里山自体がインフラがなくなって居住不能なので、もう買う人はいない。自分で竈でご飯を炊いて、石油ランプで暮らすような覚悟のある人しか居住できない。でも、今政府が進めているのはまさにこの流れです。里山居住者をゼロにする。
別に総務省の誰かが立案しているわけじゃないと思います。人口減少局の超高齢社会においてさらに経済成長しようというような無理な課題を出したら、戦争するか、兵器産業に特化するか、里山を居住不能にして、都会に全人口を集めて賃労働と消費活動をさせるというくらいしか思い付かないからそうしているのです。経済合理性の導く必然的な結論なわけですよ。別にどこかに糸を引いている「オーサー」がいるわけじゃない。でも、経済成長「しかない」と信じているのなら、日本に許された選択肢はそれくらいしかないということです。
だから、われわれが言うべきなのは「もう経済成長なんかしなくていいじゃないか」ということなんです。今行われているすべての制度改革は、改憲も含めて、すべて「ありえない経済成長」のためのシステム改変なんです。経済成長をあきらめたら、こんなばかばかしい制度改革は全部止めることができる。でも、まだ言っている。民進党も相変わらず「成長戦略」というような空語を口走っている。SEALDsの若者たちでさえ「持続可能な成長」というようなことを言っている。若い人たちさえ経済成長しないでも生き延びられる国家戦略の立案こそが急務だということがまだわかっていない。
水野和夫さんのようなエコノミストがもう成長しないんだから、定常経済にソフトランディングすべきだと提案されていますけれど、政治家もメディアもそういう知見を取り上げない。でも、これは歴史的な自然過程なんです。どうしようもない。反知性主義的思考停止は「ありえない経済成長」のための秘策を必死に探し出して、国をどんどん破壊してゆくというかたちで症候化している。彼らは自分たちが閉じ込められているこの檻以外にも人間の生きる空間があることを知らない。そして、檻の強化のために必死になっている。
われわれが提示できるのは、このような状況においても、われわれの前にはまだ多様な選択肢があるとアナウンスすることです。われわれは歴史のフロントラインにいるわけです。これは人類がかつて一度も経験したことのない前代未聞の状況です。人口減少局面なんか、日本列島住民は古代から一度も経験したことがない。だから、どうすればいいかなんてわかるはずがない。この先何が起こるかわからない。分からない以上は「この道しかない」と言って「アクセルをふかす」ような愚劣なことをしてはならない。先が見えないときは、そっと足を出して、手探りで進む。過去の経験知に基づいて、「さしあたり、これは大丈夫」という手堅い政策だけを採択する。それくらいしかできなと思います。

【第二の質疑】
最初のご質問は政治学の話ですね。現代の政治過程の株式会社化、市場原理化について、政治学者たちがどう考えているか。僕もよく知りません。そういうような論文を書かれたりしている政治学者ってあまりいないんじゃないでしょうか。僕の今日の話も、全部素人の床屋政談の類です。別に政治学的な根拠があって話しているわけじゃありません。でも、素人でも、わかることはわかる。
僕が子どもの頃は、まだ日本の産業の半分は農業でした。勤労者の半数が農業従事者だった。都市サラリーマンはというのはまだ少数派でした。サラリーマン・マインドというのが、ここまで国民全体に広がっていって、それ以外の発想法もある、それ以外の組織原理もある、それ以外の意思決定プロセスもあるという平明な事実そのものが忘れられてしまった。それはほんとうにこの20年ぐらいですね。1980年代から後ですね。だから、マインドといっても、基本的には相対的な、数値の問題なんですよ。サラリーマンの数が増え過ぎて、生まれてからサラリーマンしか見たことがない、サラリーマン的な組織しか知らないという人たちが人口のマジョリティを占めたせいで、あたかも株式会社こそが社会のあるべき姿であって、それ以外の組織形態は「ありえない」と素朴に思い込む人が増えてしまった。それだけのことだと思います。ものを知らないというだけのことです。
サラリーマン・マインドの内面化という事態は、統計的に示すとか、エビデンスを示すことができません。だって、政治学者たち自身が株式会社化した大学の中でキャリア形成しているわけですから。それがふつうだと思っている人に「日本はおかしいよ」と言ってもきょとんとされるだけじゃないですか。
僕みたいな文学者とか武道家とか政治学と全く無関係な人間であれば、何を言っても相手にされないので、お目こぼしに与れる。
混乱期激動期に起きている「これまで見たことのない現象」はどういうふうに記述すべきか、どういうふうに測定すべきか、観察や計測の手段そのものがない。だから、学問的・客観的にそれについて語ろうと思うとむずかしい。でも、それでいいと思うんです。僕はもう大学教員じゃありませんから、学術的厳密性のないことをしゃべっても、特段のペナルティも負わない。そういうアドバンテージを持つ少数の人間が「そういうこと」を話せばいい。

あとの方の質問は対米従属ですね。対米従属のありようもどんどん時代とともに変わっていると思います。1945年から1972年の日中共同声明くらいまでの期間が「対米従属を通じて対米自立を獲得する」という戦後の国家戦略がそれなりの結果を出すことができた時期だと思います。米軍が出て行った後、安全保障についても、外交に関しても、エネルギーについても、一応国家戦略を自己決定できるような国になりたいという思いがあった。でも、72年の日中共同声明が結果的には日本政府が自立的に政策判断した最初で最後の機会になりました。
それまでは「対米従属を通じての対米自立」戦略はそれなりに成功してきたわけです。45年から51年まで6年間にわたる徹底的な対米従属を通じてサンフランシスコ講和条約で形式的には国家主権を回復した。その後も朝鮮戦争、ベトナム戦争でも、国際世論の非難を浴びながらアメリカの世界戦略をひたすら支持することによって、68年に小笠原、1972年に沖縄の施政権が返還された。講和と沖縄返還で、日本人は「対米従属によって国家主権が回復し、国土が戻って来た」という成功体験を記憶したわけです。
そのときに、田中角栄が出て来た。そして、主権国家としての第一歩を踏みだそうとして日中国交回復という事業に取り組んだ。もう十分に対米従属はした。その果実も手に入れた。そして、ホワイトハウスの許諾を得ないで中国との国交回復交渉を始めた。その前にニクソンの訪中があったわけですから、遠からずアメリカから日本政府に対して「中国と国交を回復するように」という指示が来ることは明らかだった。日中国交回復はアメリカの世界戦略の中の既定方針だったわけですから。そして、田中角栄は日中国交回復に踏み切った。
これについてアメリカが激怒するというのは外交的には意味がわからないんです。だって、いずれアメリカが指示するはずのことを日本政府が先んじてやっただけなんですから。でも、このとき、キッシンジャー国務長官は激怒して「田中角栄を絶対に許さない」と言った。その後の顛末はご存じの通りです。だから、あのときに日本の政治家たちは思い知ったわけです。たとえアメリカの国益に資することであっても、アメリカの許諾を得ずに実行してはならない、と。
対米自立を企てた最後の政治家は鳩山由起夫さんです。普天間基地の移転。あのときはすさまじい政官メディアのバッシングを喰らって、鳩山さんは総理大臣の地位を失った。理由は「アメリカを怒らせた」というだけ、それだけです。日本の総理大臣が日米で利害が相反することについて、日本の国益を優先するのは当然のことだと僕は思いますけれど、その当然のことをしたら、日本中が袋叩きにした。
もうこの時点になると、対米従属だけが自己目的化して、対米自立ということを本気で考えている政治家も官僚も財界人もジャーナリストも政治学者もいなくなった。
日本の指導層はアメリカのご意向を「忖度」する能力の高い人たちで占められている。その能力がないとキャリアが開けないんだから仕方がない。それぞれの持つしかるべき「チャンネル」から、アメリカはこういうことを望んでいるらしいということを聞き出してきて、それをしかるべき筋に注進して、それを物質化できる人間の前にしか今の日本では日本ではキャリアパスが開けない。そういうことです。
ですから、これからあと、アメリカが宗主国としての「後見人」の役を下りた場合に、日本はいったいどうする気なのか。僕には想像がつきません。今の日本には自立的に国防構想や外交構想を立てられる人物がいない。政治家にもいないし、官僚にもいない。どうやってアメリカの意図を忖度するのか、その技術だけを競ってきたわけですから、日本の国益をどうやって最大化するか、そのためにはどういう外交的信頼関係をどこの国と築くべきか、どういうネットワークを構築すべきか、指南力のあるメッセージをどうやって国際社会に向けて発信するか、そういうことを真剣に考えている人間は今の日本の指導層には一人もいない。とりあえず、身体を張ってそういうことを口にして、広く国民に同意を求めるというリスクを冒している人間は一人もいません。
この人たちのことをだらしがないとか言っても仕方がない。倫理的な批判をしても、彼らの「オレの出世が何より大切なんだ」というリアリズムには対抗できない。日本の国益って何だよ、と。そんなもののことは考えたことがない。アメリカに従属すれば自己利益が増大するということはわかる。だからそうやって生きている。そうやって財を築き、社会的地位を得て、人に羨まれるような生き方ができている、そのどこが悪いとすごまれると、なかなか反論できません。
でも、本当に新聞の記事には「日本の国益」という言葉がもうほとんど出てこない。一日に一回も出てこない日もある。外交や基地問題や貿易問題とかを論じている記事の中に「国益」という言葉が出てこないんです。国益への配慮抜きで政策の適切性について論じられるって、すごいアクロバットですよね。でも、日本のジャーナリストたちはそういう記事を書く技術だけには長けているんです。国益については考えない、と。国益を声高に主張すると、対米従属の尖兵になっている連中に引きずり下ろされて、袋叩きになるということがわかっている。そういうどんよりした空気が充満しているんですよね。いったいどうなるんでしょう、これから。

【第三の質疑】
破局願望というのは、少し強い言い方ですけれども、変化願望ですね。とにかくどんどん変化するのがいいんだ、と。目先のことに即応して変化すること自体が価値なんだ、と。
社会を早く変化させるファクターは二つあります。政治イデオロギーと経済です。ですから、社会の変化を加速するためには、社会的共通資本を政治イデオロギーや経済活動に結びつける。学校教育にイデオロギー教育を持ち込む、医療に市場原理を持ち込む、行政に「民間」を持ち込む。そういうことです。司法の場合、どういうかたちで「変化しろ」という圧力がかかってくるのか、僕にはわかりません。イデオロギー的な抑圧というかたちで来るのか、それとも法曹たちの活動はもっと市場原理に従うべきだという言い方で来るか、それはわかりません。たぶん経済活動との結びつきを強化しろというかたちで来るんだろうと思います。法曹は旧態依然としていて、社会の変化に対応していない。もっと社会の変化にキャッチアップできるようなレスポンスのいい組織に切り替えろ、と。たぶんそういう言い方をしてくると思います。実際にもう弁護士会の中にもそういう主張をしている人がいるかもしれませんけれど、それはグローバル資本主義への最適化ということを言っているのです。それに対して、皆さん方ができる抵抗というのは、とりあえず浮き足立って変化することをきっぱりと拒否するということです。
われわれの社会的責務は社会のいたずらな変化を抑制し、社会の常同性を担保することにある、と。だから、政治イデオロギーがどう変わろうと、経済システムがどう変わろうと、それに最適化して司法のシステムを変えるということは受け容れない。変えてはいけないものは変えてはいけない。変わってはいけないものを守護するのがわれわれ法曹の仕事である、と。きっぱりそう言うべきだと思います。
それが皆さんに真に求められているものではないかという気がします。社会制度の常同性を担保することのたいせつさを本当に現代日本人は軽んじていると思います。それがわれわれの職業的責務であるということをきちんと言い切り、そのための理論武装がないと,「社会のニーズに合わせて変化しろ」という圧力に抗して戦い抜くことは難しいと思います。  
Posted by 春 ヲ 呼 プ at 14:14Comments(0)内田樹氏

2016年06月24日

(( ;゚Д゚))





  
Posted by 春 ヲ 呼 プ at 13:11Comments(0)あ~あ

2016年06月17日

東京都民の80%が望んだ知事の辞職


http://blog.tatsuru.com/


 東京都民の80%が望んだ知事の辞職によって、都知事選挙は7月31日から8月7日の間に行われる見通しである。彼の離職によって、彼が関わってきた2020年の東京オリンピックの運営にも影響が出ると見られている。
 舛添氏の奇癖は以前から知られていた。「2014年の知事選以来、舛添は会計上の規則違反を繰り返してきたと言われている」と都政に詳しいある人物は指摘している。民放テレビやスキャンダル専門紙で連日のように荒れ狂ったメディアの暴風について、この専門家は「攻撃は周到に用意されていたもので、タイミングを計って行われた」と言う。情報筋によれば、この攻撃は計画的なもので、官邸の暗黙の同意を得て行われた。
 メディアが知事問題一色に染まったために、報道された場合に政府にとって不都合ないくつかのニュースが結果的に報道されなかった。知事についての報道の開始は、英紙「ガーディアン」が2013年にブラック・タイディングに対してなされた130万ユーロの資金流入についてのフランス当局の捜査について報じた5月11日と同時期である。シンガポールに拠点を置くこの会社はパパ・マサタ・ディアク−1999年から2013年までIOC委員、前国際陸連会長で、現在は汚職で捜査中のラミーヌ・ディアクの息子−の所有するものであり、この資金は日本の五輪誘致チームから出たものと見られている。
 日本では、このニュースは二人の人物を巻き込む可能性があった。一人は現在も政界に力を持つ森喜朗元首相。彼は五輪の東京招致を推進し、現在も五輪組織委員会のトップにいる。もう一人はJOCの委員長で、皇族の竹田恒和である。
 同じように、舛添氏に対する攻撃は「パナマ文書」の暴露とも同時期だった。日本の400の個人名と企業名がそこに言及されているというのに、日本のメディアはこれについてほとんど何も報道していない。
 「さらに、舛添事件によって、7月10日の参院選の選挙選のスタートが丸ごと隠蔽された。これはさまざまな批判、とりわけ経済政策の失敗についての批判を回避しようとしていた政府にとってはまことに好都合なことだった」と専門家は語っている。 

 
 
 
  
Posted by 春 ヲ 呼 プ at 09:25Comments(0)あ~あ